2008年11月28日

レクター博士

「レクター博士」とだけ聞いてすぐにハンニバル・レクター博士が思い浮かんだアナタはまあ俺と同類でしょう。「ハンニバル・レクター」と聞いて『ハンニバル』、『ハンニバル・ライジング』が思い浮かべば、まあまあのファンってところ。『羊たちの沈黙』『レッド・ドラゴン』まで思い浮かべば立派なもんです。

レクター博士はトマス・ハリス原作の小説の登場人物で、精神科医にして猟奇殺人者でカニバリスト(人肉食い)という、けっこうどぎついキャラをしてます。映画ではアンソニー・ホプキンスが演じています。時代設定順では、
『ハンニバル・ライジング』(幼少期-青年期)
『レッド・ドラゴン』
『羊たちの沈黙』
『ハンニバル』
となります。原作者トマス・ハリスは、デビュー作『ブラック・サンデー』を入れて30年にわたる執筆活動のなかで以上の5作しか発表していない、極めて寡作な作家。

俺が初めて触れたのは映画『羊たちの沈黙』のDVDを観たときで、興味を持ち、小説を読んだ。その時はまだ映画化されていたのは『羊たちの沈黙』だけで、さらに深く知るには小説をあたるしかなかったので、『ハンニバル』を読んだ。その後『ハンニバル』が映画化されて、映画館まで観に行った。そのあと映画化された『レッド・ドラゴン』はDVDで観ただけ。『ハンニバル・ライジング』は原作も映画もまだ観てない。つまりレクター博士が幼少期に抱えたトラウマなどはそんなに詳しく知らない。ただ、ネットで検索すればだいたいはわかるし、それ以前に、映画で省かれて一切触れられていない部分が小説『羊たちの沈黙』『ハンニバル』で書かれているので、映画しか観てない方に比べればいくらかは知識がある。

レクター博士のトラウマは、戦時下で妹のミーシャを兵士たちに食われた、というもの。幼くして両親を亡くし、ミーシャを溺愛していたレクター少年はそこで大きな心の傷を負う。のちに出会うクラリス・スターリング捜査官に亡き妹の影を重ねているようなところもある。逆に、クラリスも幼い頃に警官(保安官だったかな?)だった父を犯罪者に殺されたトラウマがあり、FBIに入った。原作では最終的に二人で姿を消す。映画ではレクター博士一人で逃げるのだが。原作のラストでは二人は恋人(?)みたいになってて、もしかしたら続きが発表されるのかな・・・なんて思ったりする。ただその場合、映画化するときはどう辻褄をあわせるのか問題ではある。

映画に関しての問題はもうひとつ、クラリスを演じる役者について。『羊たちの沈黙』ではジョディ・フォスターだったけど、『ハンニバル』ではジュリアン・ムーアだった。ジョディ・フォスターが出演を断ったらしい。レクター博士はアンソニー・ホプキンスで統一されてるからいいけど、クラリスだってけっこう大事な役だから、そうそう女優を代えられちゃうとイメージが定着しない。俺は両方好きだけど、だからといって両方がやるのはあんまり受け入れられないな・・・。

ところで、レクター博士は、まあ異常者ではあるけど、非常にインテリで(天才レベル)紳士的な人物である。芸術にも造詣が深いし、女性に対して礼儀正しいし。そんな彼が聴く音楽はクラシック。特にお気に入りなのはグレン・グールド演奏のバッハ「ゴールドベルク変奏曲」だそうだ。これは今この記事を書こうとして調べていて知った。グールドのゴールドベルク変奏曲といえば、9月28日の「クラシックはじめました」で書いたとおり、俺が適当に買ったクラシックCDのひとつだ。偶然といえば偶然だろう。けっこうメジャーな部類だし。でも、もしかしたら、小説か映画で知ってて、無意識にグールドを刷り込んでいたのかもしれない。ただ、グールドの「ゴールドベルク変奏曲」は何十年も前のデビュー当時の演奏から晩年の新録までいろいろヴァージョンがあるから、レクター博士が気に入っている演奏が、俺の持ってるCDと同じなのかどうかまでは不明。ちなみに俺が持ってるのは晩年の一番最後のやつ。(しかも今、聴きながらこの文章書いてますw。)

それからまた話は変わるんだけど、レクター博士って指が6本あったのね。多指症ってやつ。多指症で思い浮かべたのは、ずいぶん前に読んだ曽野綾子『華やかな手』という小説。多指症って、俺の身近では聞いたことないけど、実際はそんなに稀でもないみたい。歴史的に見てもけっこういる。たとえば豊臣秀吉とか。秀吉は右手の親指が2本あったらしい。多指症は黒人に多いらしいんだけど、日本人で多指症だと、親指が多い傾向があるようだ。他に有名人ではJ.D.サリンジャー(作家。『キャッチャー・イン・ザ・ライ(ライ麦畑で~)』とかグラース家のシリーズが有名。現在は外界との接触を絶って沈黙してる。この人についても俺はいずれ書くことになるだろう。)も多指症だそうだ。

たしか村上春樹『風の歌を聴け』に出てくる女の子も6本指だったよな・・・?と思って調べてみたら、逆だった。事故で4本になったのだ。それによって双子の姉妹間に対するまわりの人間のとり違いがなくなった、ってことだった。まあだからそもそもこの女の子は5本指だったわけで、先天的に欠指だったのではなく(もちろん多指でもなかった)、レクター博士とは全く関連はありません。ただ、指の本数どうのこうのって思い出しただけです。ちなみに俺も双子の片割れですが、男女の双生児なので間違えられた経験はもちろんない。

で、レクター博士の話に戻るけど、これから作品に触れようと思う方は絶対小説の方がいいよ。小説を映像化した例のほとんどに言えることだけど、時間的な制約から、大事なエピソードがカットされてたり、心理描写なんかもヴィジュアル化が難しいからないがしろになってたりする。おもしろさの差はかなり大きい。原作を読みましょう。

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